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オープニング&表彰式

2018年1月26日と27日の2日間にわたって「eAT2018 in KANAZAWA」が開催されました。22回目を迎える今年のテーマは「KANAZAWOW!」。プロデューサーを務めるアートディレクターの秋山具義さんをはじめ、様々なジャンルで活躍するクリエイターによるセッションやスーパートークが行われ、合計597人の参加者が詰めかけました。

初日のオープニングは、eAT実行委員会委員長の中島信也がご挨拶。
「今日の世界は、アートとテクノロジなど異なるもの同士がボーダーレスに交わり合い、常に新しいものが生まれています。これは、様々なカルチャーをごちゃ混ぜにしていくというeATの精神そのもの。今年のeATでも、様々なゲストたちの出会いやセッションによって新しい何かが生まれるはず。その予測不能な化学反応を楽しんでください」と、自らの期待感も込めながら開催を宣言しました。

続いて、映像とクリエイティブの分野で活躍している方たちを表彰するセレモニーへ。受賞者には、金沢を拠点に3Dと伝統工芸を組み合わせたモノづくりを行うseccaによる、実際にも弾けるウクレレ型トロフィー「SHINYA NAKAJIMA-WOWKULELE」が山野之義・金沢市長から手渡されました。
将来の有望な個人または団体を表彰する「eAT2018 金沢奨励賞」の受賞者は、プログラミングゲーム「HackforPlay」を開発したハックフォープレイ株式会社代表取締役の寺本大輝さん。実行委員副委員長の宮田人司さんは受賞理由について「子どもが興味を持ってプログラミングを学べる仕組みを作り、さらに全国を飛び回ってPR活動を広げているエネルギーが素晴らしい」と述べました。

目覚ましい活躍や最先端の取り組みを行なっている個人または団体を表彰する「eAT2018 金沢大賞」は、コピーライティングにとどまらず多岐にわたって活躍しているコピーライターの小西利之さんが受賞。中島信也は小西さんについて「eATを中心に、金沢におけるクリエイティブなコミュニケーション環境に尽力してきた功績者。クリエイティブ活動とビジネスを両立できる新世代のクリエイターです」と惜しみなく称賛しました。

トークセッション1

寺本大輝×宮田人司
「eAT2018 金沢奨励賞」「eAT2018 金沢大賞」の表彰式に続いて、各賞の受賞クリエイターによるセッションへと移行。まずは寺本大輝さんがステージに上がり、自身のクリエイティブ活動についてプレゼンテーションを行いました。

16歳でプログラミングと出会って以来その虜となり、「プログラミングは楽しいものだと子どもたちに伝えたい」と思うようになった寺本さん。寺本さんが考えるプログラミングの楽しさとは、コードを書くことによって頭の中で思いついたものを形にできること。「コードを書くこととゲームを掛け合わせたら面白いものが生まれるはず」と確信し、2014年にプログラミングゲーム「HackforPlay」を開発しました。


寺本さんはゲームの特徴について映像を用いながら解説。

HackforPlayはゲーム画面の横にコードが書かれた画面があり、これを書き換えることでゲームの世界も書き換わる仕組みになっています。このとき、補助的に表示されるキャラクターの絵をクリックすると、必要なコードが出てくるので、プログラミング初心者の子どもでもゲームを作れるように設計されています。さらにユーザーが作成し投稿したゲームを、さらに他のユーザーが書き換えることができます。「オープンソースソフトウェアと似たような仕組みを子どもの頃から体験できるんですよ。それってワクワクしませんか?」とその醍醐味を参加者たちに語りかける一幕も。

また寺本さんはHackforPlayの面白さを広めるため、全国で自ら子ども向けのPR教室やワークショップを開催。その一方で、総務省によるプログラミング教育事業推進会議にも委員として参画。この推進事業の一環で全国の学校に足を運び、活動のために必要なものを直接リサーチし、その知見を現場へフィードバックしています。今後のビジョンについて寺本さんは「こうした活動を継続し、すべての子どもたちがプログラミングを好きになれる世界を作っていきたい」と熱く宣言しました。

トークセッション2

小西利之×秋山具義
続いてのトークセッションには「eAT2018 金沢大賞」を受賞したコピーライターの小西利之さんが参加。本年度eATプロデューサーでもあるアートディレクターの秋山具義さんと中島信也と共に登壇し、自らの多彩な活動について映像を交えながら語ってくれました。

CM映像・グラフィックの企画やコピーライティングにとどまらず、都市開発やブランドの商品開発にも携わっている小西さん。自らの立ち位置について「何をやっているのか自分でも分かりませんが(笑)、クリエイティブのコミュニケーションを作用させるため、様々なフィールドで言葉や企画を作っています」と定義しました。そんな多才な小西さんが大切にしているスローガンは「“伝える”から“伝わる”へ」。そこには相手のことを考えてこそ成立する“伝わる”というコミュニケーションが、世界に浸透していってほしいという小西さんの思いが込められているそうです。

最近小西さんがクリエイティブ活動において重点を置いているのが「言葉を作る能力を、逆に使うこと」。つまり、従来のコピーライティングの役割とは、企業からのメッセージが大衆に伝わるようアウトプットすることでしたが、逆に「あらかじめ考えつく、大衆に“伝わる”“ウケる”要素」を先に企業へと還元し、そのポイントに沿った商品・サービス開発を行うということ。こうした“人が動きたくなる物語”を考える開発メソッド=ストーリーシンキングの思考プロセスについて、小西さんは分かりやすく図式化したスライドで解説。そのロジックを理解しようと参加者たちは熱心に耳を傾けていました。

最後に小西さんは、「動かない人にゴールは来ない」「左手は添えるだけ」など活動の指針としている5つのスローガンを紹介。これまで手がけた映像作品などを例に挙げながら、今後の目標や自らが果たすべき役割について語りました。

トークセッション3

上杉裕世×樋口真嗣
初日のセッションの最後を飾ったのは、オムニバス・ジャパンVFXスーパーバイザーの上杉裕世さんと映画監督の樋口真嗣さん。ILMで29年間活躍した、日本が誇る視覚効果アーティストの第一人者である上杉さんのトークを中心に、予定時間を上回る濃密なセッションが繰り広げられました。

まずは上杉さんがスライドを交えながら、視覚効果の世界に入るきっかけとなった興味深い逸話を紹介しました。大学時代に『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』のリアルなマットペインティングに魅了された上杉さんは、気の合う仲間と自己流で特撮映像を作成。8ミリカメラをモーションコントロールカメラにカスタマイズし、PCからパルスを送ることでカメラの回転を制御するなどの工夫の数々に、樋口さんも「まだ技術環境が十分整っていない時代に、ここまでやっている人がいたんだ」と驚きの様子。

続いて上杉さんは、師と仰ぐマットペインターのロッコ・ジョフレに認められ渡米し、その後ILMで活躍した軌跡を映像と共に振り返ります。デジタル合成の最初のマットペイングショット、『ダイハード2』のエンディング映像など、自ら飛躍を遂げた転機について懐かしそうに語りました。通常の視覚効果映像は各工程の分業体制が一般的なのに対し、上杉さんはすべて1人で制作していたとのこと!また渡米後の生活費を稼ぐため、賞金目当てで「欽ちゃんの全日本仮装大賞」に出演したお話も披露しました。(ちなみに満点を獲得し見事優勝!)

会場の参加者からの質問タイムでは、1人で映像を制作しているというクリエイターに上杉さんが「1×2が4にも8にもなる仲間の存在は大切です。今は誰でも簡単に映像を制作できるツールや技術が整っている時代だから、他人とは違う表現方法を追究してください」とアドバイス。
最後に樋口さんから「今回のトークは、日本の誇る才能がアメリカに渡ったという残念な話でもあります。そんな上杉さんが昨年から活動の場を日本に移すことになりました。世界レベルの仕事をこれから間近で見せてください」というエールの言葉で締めくくりました。

スーパートーク1
「HASEGAWOW!〜スペキュラティブアートは未来を拓く?〜」

山口裕美×長谷川愛
2日目は全5回のスーパートークが開催され、多彩なゲストたちが各専門分野の“オドロキ”を参加者たちにプレゼン。最初のトークには、日本の現代アートを世界に発信しているアートプロデューサーの山口裕美さんと、山口さんが「今面白いアーティスト」と推薦する長谷川愛さんが登場しました。

まずは世界の現代アートを取り巻く状況について山口さんが解説。その中で長谷川さんと出会ったきっかけを振り返りながら、「デザインの目的を“未来はこうあるべき”という問題解決ではなく、“こういう未来もありうるのでは?”と憶測する問題提起に置く。そんなスペキュラティブデザインをアート作品へと昇華させたのが長谷川さんです」と紹介しました。

続いて長谷川さんが、総合プロデューサーとして山口さんが携わる「掛川茶エンナーレ」で展示された『私はイルカを産みたい…』『(不)可能な子供』について自ら解説。その奇想天外な作品コンセプトが長谷川さんならではのSF的イマジネーションを交えて語られ、参加者のみならず山口さんまで圧倒される一幕も。科学技術の革新によって揺らぐ生命倫理を問いかけるテーマについて、山口さんは「発想こそSF的ですが、いずれも技術的には近い将来可能になるもの。その実行をいつ誰が判断するのか?という深い示唆に富んだ提言とアートの融合こそが彼女の真骨頂です」と高く評価しました。

さらに、完成作からは想像がつかないほどアナログな『私はイルカを産みたい…』の制作秘話で笑いと驚きを誘い、最後に山口さんが「世界の最先端の作品を生み出し、発想もユニーク。長谷川さんは日本の現代アート界を担っていく人なので、ぜひ応援してください」とその将来性に太鼓判を押しました。

スーパートーク2
「ビジュアル工作WOW!」

土佐信道×藤原麻里菜×ギャル電×夢眠ねむ
続いて登壇したのは、明和電機代表取締役社長の土佐信道さん、メイカーの藤原麻里菜さん、電子工作ユニットのギャル電、『でんぱ組.inc』のメンバー・夢眠ねむさん。独創的なアイデアだけでなく“見せる”モノづくりに定評のあるクリエイターたちが、刺激あふれる濃厚な個性をステージの上で交錯させました。

まずは司会進行も務める土佐さんが、2017年に生み出したナンセンス工作ベスト5を発表。無印良品とのコラボ展示で生まれた「文庫楽器」や、部屋に泥をまき散らして歩く「ドロドロボ」など、ナンセンスな発想に会場は爆笑に包まれました。

自称“意識の低い電子工作とプレゼン”を得意とするギャル電は、光りモノが好きなギャルのウケを狙ったデコトラキャップや電子特攻服など異彩を放つ作品を紹介。とことんギャル視点に徹したユニークなこだわりを通じて、「テクノロジーは難しいものではない」という彼女たちのメッセージが伝わってきました。

頭に浮かんだ不必要なものを作り上げる“無駄づくり”に日々励んでいる藤原さんは、ヒモを養う気分を味わえる貯金箱など、ギャル電に劣らず意識の低い電子工作を披露。吉本興業の芸人時代を原点とする“お笑い”を軸にしたモノづくりは、まさに「テクノロジーの無駄使い」という土佐さんの言葉通り。「意味のない物がそこにある空気感を面白がってほしい」という藤原さんの思いを参加者たちも共有していました。

多摩美術大学でメディアアートを学び、自分自身を用いてメディアで表現する手段としてアイドルを選択した夢眠さんは、“夢眠ねむ”という作品を作り出すプロデュース術について解説。自分にプレミア性を付けるため1000枚限定のCDを生産したり、CDを購入することで参加できる展示会を開催するなど、数々の仕掛けに込められた戦略的なプロデューサー目線を明かしてくれました。

最後に土佐さんが、キャラも表現スタイルもバラバラなゲストたちの印象を「奇抜だけど各々ちゃんとしたロジックがあり、自分を客観的にとらえている」と分析。ゲストたちの個性派たる所以を参加者に明示して締めくくりました。

スーパートーク3
「言葉WOW!」

佐渡島庸平×はあちゅう×小西利行
「言葉WOW!」と題したスーパートークに出演したのは、クリエイターのエージェント会社「コルク」代表取締役社長の佐渡島庸平さんと、ブロガー・作家のはあちゅうさん。コピーライターの小西利行さんが司会進行を務める形で、言葉を武器にするクリエイターたちの熱いトークが繰り広げられました。

「エージェント制が主流の海外へ日本の作家が進出する手助けになりたい」という思いからコルクを設立し、社会にあふれる情報を編集するキュレーターとしても引く手あまたな佐渡島さん。既存の作家の定義を更新するためあえて“ブロガー・作家”と名乗り、読者と直接つながる課金制WEBマガジンなど様々な発信スタイルに取り組むはあちゅうさん。さらにコピーライティングのみならず都市開発も手がける小西さんも交え、一つの肩書にとどまらない表現活動を展開する3人の議論は熱を帯びました。

はあちゅうさんは「音声コンテンツのように生活の中に入り込みやすい表現に力を入れながら、伝え方の幅を広げたい」と自らが目指す作家の新しいあり方を主張。一方、佐渡島さんは理想の編集者像について「伝えるテーマを定めて、それが確実に伝わるようコンテクストを整えること。そして才能の原石を発掘し育てること」と力説。さらに原石の見つけ方を尋ねられ「物語とは感情を動かして作るもの。社会通念に縛られない、新しい感情の動きに気づけている人を見極めています」とコツを披露しました。

さらに話題は、受け手にメッセージを届けるコツへと展開。はあちゅうさんは「届くまでしぶとく続けること」、佐渡島さんは「言葉のイメージのズレを乗り越えられる、強度の強い言葉を組み合わせていくこと」と答えました。

最後に今後の目標について、はあちゅうさんは「今年でフリーランス4年目。これまでの仕事をいったんリセットし“自分がどう生まれ変わるか”という実験結果を本にしたい」。佐渡島さんは「個人のクリエイターが技を磨いて活躍できる場を作り、彼らの能力を開花させたい」と語りました。

スーパートーク4
「食べるWOW!」

本田直之×田中知之(FPM)×秋山具義
本来のeATとは異なる意味の“食”をテーマにした「食べるWOW!」。全世界を旅しながら食やビジネスにまつわる著書を執筆するレバレッジコンサルティング株式会社代表取締役の本田直之さん。国内外の音楽シーンで活躍する傍ら、SNSで料理写真をアップするうちに食の取材が増えたというDJ/音楽プロデューサーの田中知之(FPM)さん。さらにアートディレクターの秋山具義さんを含め、「食べログ」のグルメ著名人に選ばれた美食家3人が登壇しました。

近著『オリジナリティ 全員に好かれることを目指す時代は終わった』について尋ねられた本田さんは、「これからの時代は、オリジナリティのない人は生き残っていけません。今最もオリジナリティを必要とされる食のプロたちのレポートから、一般の人たちもヒントを得てほしい」と提唱。さらに「一流レストランの皿に載るようなハーブを作る」という農家らしからぬ発想からハーブ農園を再建させた男性の例を挙げながら、「オリジナリティを生み出すには常識を疑ってかかること」と持論を展開しました。

さらに田中さんがオリジナリティ論を音楽へと広げ、西洋音楽をオリジナルへと発展させ海外に受け入れられた渋谷系音楽のムーブメントを回顧。すると本田さんが、そのウェーブが今になって食の世界へ波及していると指摘。「世界の嗜好がシンプルで繊細な料理へと流れたことによって、日本人シェフの活躍する場が増えた」と分析していました。

続いて話題は国内外の注目レストランに。なかでもトークが熱を帯びたのは、所在地が明かされずお客も毎晩10人限定という上海の超異色レストラン「ウルトラバイオレット」。プロジェクションマッピングを用いたり、料理に合わせて室温調整やアロマの香りを放つなど、3パターンの異なる演出を選べる奇抜な食体験を本田さんが映像と共にプレゼン。実際に訪れた田中さんも「五感を刺激するエンタメ演出がユニークで、音楽ライブでやりたいことを先にやられた気分です」と感想を告白。さらに秋山さんが「今後はこの店のように食の世界もストーリー性が重要になる」と分析していました。

最後に、これからの目標を尋ねられた田中さんは「これだけ美食が広く普及したから、逆にマズイ料理を体験していきたい」とチャレンジを表明。続いて本田さんが「世界で活躍する若手シェフを応援する本や番組を作り、彼らの地位向上を手伝いたい」と語りました。

スーパートーク5
「フェンシング×○○=WOW!」

菅野薫×太田雄貴
2日間に渡るトークセッションの最後を飾るテーマは「フェンシング×○○=WOW!」。メディア界の気鋭クリエイターたちの協力を得ながら、フェンシングの見せ方を新しく変えようとチャレンジしている五輪メダリスト・太田雄貴さんの様々な取り組みを、電通クリエイティブ・ディレクターの菅野薫さんが聞き出しました。

最初に触れられた改革プロジェクトは、菅野さんが2013年から携わっている「Fencing Visualised(フェンシング・ビジュアライズド)」。フェンシング普及の壁となっていた試合の分かりづらさを解消するため、剣先の動きをモーショントラッキングによってビジュアル化し試合映像と融合するという最新技術で、太田さんの難しい要望にディープランニングを活用することで応えたという菅野さんの試行錯誤が語られました。

続いて話題は、フェンシングの基本ルールを2分間で分かりやすく解説した映像「MORE ENJOY FENCING(モア・エンジョイ・フェンシング)」へ。映像を制作した菅野さんが「この映像がかなり話題になって、海外からの視聴がたくさんあったので、日本語でつくったの失敗したな」と反省する一方、太田さんは「ルールをすべて知らなくても楽しみ方のポイントさえ理解してもらえたら、観客にもプロの凄さが伝わるはず。その入口まで案内する役割は果たせたと思います」とその効果を自負していました。

31歳という異例の若さで日本フェンシング協会会長に就任した太田さんは、一人でも多くの人が競技会場へ足を運び観戦を楽しんでもらえるよう、21もの斬新な改革案を導入。競技フロアにLEDディスプレイを設置した「フェンシング×LED」、試合前にFISHBOYがダンスパフォーマンスを行う「フェンシング×ダンス」など従来の常識に縛られないアイデアの組み合わせを紹介し、「淡々と競技を行っているだけでは観客に伝わらない、楽しさや感動が生まれやすい環境をこれからも作っていきたい」と今後の意欲を語りました。