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オープニング&表彰式

2017年1月27日、28日の2日間にわたって行われた「eAT2017 in KANAZAWA Powered by TOHOKUSHINSHA」。プロデューサーに、コピーライター/クリエイティブ・ディレクターの小西利行さんを迎え、「会いにキテレツ。見にキテレツ。」をテーマに開催されました。

企画制作:オムニバス・ジャパン

オープニングは、実行委員会委員長 中島信也によるご挨拶と表彰式からスタート。
「クリエイティブの神髄は人の心が動くかどうか。エンジニアリングとの関係を深め、技術が進歩しても、人と会う、生身の人と会うことが何より大事なこと。人と人が出会うところにeATの一番の価値があると考えています」と発言しました。

続いて、映像とクリエイティブの分野において活躍されている方を表彰しました。
将来の有望な個人、または団体を表彰する「eAT2017 金沢奨励賞」には、楽器ブランド「Singular」を立ち上げた北出斎太郎さん。そして、目覚ましい活躍や最先端の取り組みを行なっている個人、または団体を表彰する「eAT2017 金沢大賞」は、映画『この世界の片隅に』監督・脚本の片渕須直さんに贈られました。

大賞、奨励賞のトロフィーは、伝統工芸とテクノロジーを駆使したオリジナルの「中島信也 起き上がり」を、奨励賞を受賞した北出さんも所属するseccaが製作しました。

基調講演

片渕須直×樋口真嗣 モデレーター/小西利行
映画とネットとの新しい関係性、リアルにこだわった製作者としての思い。
昨年、日本映画界の話題をさらったおふたりを迎えての基調講演は、
核心をつくトークで初日の会場を大いに盛りあげました。

映画がつくる、新しい「体験」。

おふたりの作品に共通するのは、不親切なまでに無駄を排して描き出した圧倒的なリアリティ。モデレーターの小西さんがこれを指摘すると、両監督ともに“セリフは全部わからなくてもいい”という持論を展開。樋口監督は、「全体を通して意味が伝わればいい。ひとつのセリフに正確さを求めることで、その場面の熱量がスポイルされてしまう。整えていくことでつまらなくなるよりも、雑だけど面白いもののほうがいい」と強調しました。

これに関連して片渕監督からは、「原作を読んだときに、すずさんの何気ない日常を描きたいと思った。広島弁がよくわからないとも言われるが、説明を排するほど体験型の映画になっていくわけで、作品のどこが、ということではなく、結局入口から出口まで全部そろっていないとわからない。だからこそ、もう一回あの世界をくぐり抜けたいと思える」と話し、「体験型」の映画であることが作品のロングランの背景にあると話しました。

キテレツとは、「これでいいのだ!」

最後に、製作者としての「キテレツ座右の銘」を求められた両監督。樋口監督の「腰は低く、押は強く」に続き、片渕監督は「これでいいのだ」の一言。「これ以外に何があろう」と付け加えた片渕監督の言葉に、会場からは大きな拍手が送られました。

スーパートーク①
ビジネスとキテレツアート&コトバ

朝から連続で6本行われたスーパートーク。
1本目は、金沢で活躍中の宮田人司さんがモデレーターとなり、孫泰蔵さん、菊川裕也さん、北出斎太郎さんと、それぞれ掛け合う形で進められました。

「21」という数字がもたらす偶然と驚き。

トークの口火を切ったのは、モデレーター役の宮田さん。「昨年同様、(本イベントの)開催回数について紐解いてみました」と、ウィキペディアで「21」という数字について調べた結果を披露。
すると、「バラの花言葉」「瓶の王冠のギザギザ(突起)の数」の他、21を使った企業名やサービス名など、ウィットに富んだ情報が次々と。さらに、宮田さんが起業した年齢が21歳であったことや、孫さんが起業した年が今から21年前の1996年であったことなど、21という数字がもたらす偶然や驚きを、次々と紹介。ユーモアたっぷりのトークと見事にマッチし、会場を笑いに包み込みました。

キテレツが、世界を変える。

続いて、宮田さんからバトンを受け取った孫さんのトークパートがスタート。学生時代から連続して起業。情報技術が生み出す新しい価値を追い続けることを、ライフワークとしている孫さん。この20年間のIT技術の変遷以上に、これからの5年、10年は、「相当進むだろうなという私の期待値を上回るスピードで技術が進化し、もっと新しい価値をつくり出す機会に面していると実感しています」。昨年、孫さんが一番衝撃を受けたという世界のスタートアップ2社の事例から、新たなシステムや企業運営のあり方を紹介しました。

また、アラン・ケイさん(コンピュータ・サイエンティスト)の「未来は予測するものではなくて、発明するものだ」というコトバを引用。この国の先行きを心配するより、つくりたい社会の実現のために、皆が力を合わせ、発明すればよいのでは、と孫さんは提案します。
「発明は、普通じゃない発想、アイデアで実現するしかない。つまり、キテレツなものをつくり出すと、最初はなんだと思っていても、少しずつ広がってくにつれ、これすごいねとなる。キテレツが世界を変えるってこういうことなんだろうなあ、というふうに思っています」と締めくくりました。

「音楽」×「ものづくり」に挑む若手クリエイター

続いて、若手クリエイターとして、北出さんと菊川さんが登壇。好きな音楽と伝統工芸や最新テクノロジーを融合させた独自のクリエイティブ活動を、それぞれ報告しました。

スーパートーク②
東京とキテレツアート&コトバ

前に、前へ。まずは出ることが大事。

今年で3回目の登壇となる菅野薫さん。昨年、eAT2016で共演した徳井直生さんとVideo Lyrics を制作。これは、カラオケ映像をAIが解析し、より映像にマッチした替え歌をつくるコンテンツです。もともとeAT2016の余興用にと遊び心で開発したものを後日、作品化しました。また、同じくeATで出会った樋口真嗣監督と、モーションキャプチャー×3DCGによる「ジェネレーターコンテンツ シン・ゴジラ〜」サイトを手がけるなど、eATの場での出会いを存分に活かしていると報告されました。

今回は、昨年のリオ五輪・パラリンピックの閉会式や、渋谷駅での年越しカウントダウンイベントの映像コンテンツ制作をともに手掛がけた児玉裕一さんと、それぞれのダイジェスト版映像を流しながら、振り返りトークを繰り広げました。

菅野さんは、商習慣が異なる環境下でのプロジェクト運営において、戸惑うこともあった様子。ですが、ドラえもんとマリオの競演など、オリンピックだからこそ実現した、おふたりのタッグによる映像演出もできました。

最後に、これから何かを達成したいという会場の若手クリエイターに対して、「やっちゃえ!」とふたりからシンプルなエールが。「(思いついたことは)どんどん世に出すのがいいと思います。前に、前へ。とりあえず先頭に立った人が取り上げられるから、そこから先は自分の実力でいくとしても、まずは出ることが大事」というアドバイスを送りました。

スーパートーク③
漫画とキテレツアート&コトバ

キテレツは、出会いから始まる。

「キテレツは、人と人とが出会うとか、何かびっくりするものを見つけることですが、ただ出会ったり、見つけるだけではダメ。それを変な角度で見て、多少勘違いするぐらいでいい。何か役に立つんじゃないかなと、ずらしたような視点で楽しむ感覚ですよね。僕と浦沢さんも、こんなに仲良くなって、NHKで『浦沢直樹の漫勉』という番組までつくるまでになったけれど、8年前に出会ったころは、ふたりで何ができるか途中までわからなかった」と語る倉本美津留さん。交遊を重ねていくうちに、浦沢さんが長年抱いていた、「漫画家の作画風景をテレビで見せたい」という思いを、倉本さんがテレビ番組企画としてカタチにしようと閃きました。

「見つけたものは、絶対にカタチにできる」と思いつづける。

企画から実現まで、約2年。漫画の作画現場を放映するのは、「専門的すぎてテレビ向きではない」と言われ続けましたが、倉本さんは、「見つけたものは絶対にカタチにできると思うから、すぐにあきらめない。何かある!と思ったら、掴んでそれをカタチにするまでしつこく思い続けた」とのこと。また、浦沢さんも、「50年ぐらい溜めてきた」という漫画とアニメーションの違いすら認知されない歯がゆさを、「ついに吐き出せた」と笑顔で語ります。

「音楽」×「漫画」。出会いから始まる0→1のパフォーマンス。

後半は、倉本さん自作の「月」をギター演奏し、その音楽との出会いを浦沢さんが絵に表す、というパフォーマンスを披露。0→1のクリエイティブを目の当たりにした観客から歓声があがりました。

スーパートーク④
音楽×キテレツアート&ことば

音楽から紐解くスーパートーク④には、作曲家川井憲次さん、アーティスト、土佐信道さんが登壇。淡々とした語り口ながら、軽妙なトークで会場を笑わせました。

キテレツなのは、作品か、プロセスか。

二人のコラボは、明和電機が開発した楽器「セイモンズ」を用い、川井さんが楽曲制作したことによるもの。人工声帯に空気を送り、その張力を制御することで歌を歌う「セイモンズ」の開発プロセスについて土佐さんは、「得体の知れないイメージを出発点に、理詰めで“シメ”あげていく。完成品はキテレツだが、プロセス自体は決してそうではない」と話します。

一方、川井さんは、「セイモンズ」はじめ、独自に楽器を生み出すなどこれまで扱ってきた楽器のキテレツさに言及。「欲しいイメージに向かっていくが、そのプロセス自体は変。できあがりはちゃんとしていればという思いでやっている」と独自の作曲スタイルを振り返りました。

一見、対照的にも見える二人のアプローチ。その発想のベースにある思いについて、土佐さんは「明和電機の社訓は“やったもんがち、とったもんがち”。作りたいものがあれば、考えるより先に行動を」と返答。川井さんは、「見えている結果があるなら、プロセスでは何でもトライすべき。そこから新しいものが生まれる可能性もある」と語りました。

スーパートーク⑤
若手アーティストとキテレツアート&コトバ

アートプロデューサー山口裕美さんをモデレーターに、世界が注目する若手アーティストを迎えてのセッションは、eATならではの最先端テクノロジーとアートとの融合がテーマに。

変わらない価値を進化させる。

まず山口さんが、自身が手掛ける、現代アーティストと職人とのコラボで生まれた新しい茶道具について紹介。これを受け、1000年以上続く刀匠の家に生まれ育った高橋裕士さんは、世界的デザイナー、マーク・ニューソンに依頼しプロデュースした刀装具「aikuchi」の事例を報告。デジタルの世界から、“変わらない価値をどう進化させられるか”を問い続けていると話しました。

最新テクノロジーがつくる生命、自然。

一方、田崎佑樹さんは、あらゆるモノをビジュアルデザインに落とし込むコンセプター。手をかざすと自分の心拍にリアルタイムに反応し、鳥のような群体運動を再現する人工生命「UNITY of MOTION」を紹介し、機械と自然が混じり合って生まれる圧巻の映像美で会場を魅了。さらに、昨年のeATでも話題をさらった人工知能を研究する徳井直生さんは、AIとともにDJを行った事例から「AIの予測もつかないズレや外し」に言及。AIを“エイリアンなインテリジェンス(異質な知能)”と位置付けることで、人工知能のもつクリエイティビティがこれまで数値化できなかった感覚までを、言語を超えて可視化できる可能性について語りました。

スーパートーク⑥
わたしのキテレツランキング

日常のキテレツ度をランキング化。

スーパートークのトリを飾ったのは、アートディレクター秋山具義さんと、音楽家の渋谷慶一郎さん。「飲み仲間」という二人が、打ち合わせなしで挑んだセッションは、まさに“eATらしさを崩す”キテレツトークとなりました。

高校時代、アイドルのおっかけだったという秋山さん。自らのキテレツ度をランキング化すべく、オープンわずか1年半で人気店となったイタリアンバルのプロデュースや、一気に拡散されたインスタ投稿などについて“バズった作品”と位置付けます。さらに、子どものころの奇抜な夢や記憶喪失体験についても触れ、「テクノロジーは進んではいるが、人間の脳についてはまだ解明されていない」と振り返りました。

音楽ではなく、音の動きを作曲する。

それを受け渋谷さんは、「人は音楽を聞いて感動するのではなく、いかに脳の記憶や回路に音楽がアクセスするかで、エモーションなものになっていく」と指摘。また、特殊なスピーカーを用い、音の動きそのものを作曲した経験を背景に、初音ミクを使ったオペラ「THE END」が生まれたことを紹介。オペラ形式を取りながら舞台上は誰もいないという、日本特有の空虚さを逆手にとった作品が世界中で話題を呼んだことにも触れ、観客の注目を集めました。